このページの要点
- 制作・相談・代行も、法11条と施行規則23条の事項を、同じ枠で書く。着手金・修正・納品は、支払・特別条件・提供時期の欄に置く。
- 見積り制は、価格帯または算定の方法を示し、見積りを申込みの前に示す流れを書く。「別途お見積り」だけでは足りないおそれがある。
- 着手後のキャンセルは、着手前と着手後の取扱いと精算の考え方の結論を書き、計算の詳細は規約に置く。
- 事業者が営業のために結ぶ取引は適用除外になり得る(法26条1項1号)。個人と事業者が混じるなら、広告上の対象を分けるか、消費者を含む前提で整える。
結論:成果物や着手金があっても、表記は同じ枠で書く。載せるのは結論と条件の要約まで
デザインや制作、コーチングやコンサルティングのような個別の相談、事務や作業の代行は、商品を発送する通販とは性質が違います。成果物は注文を受けてから作られ、料金は着手金と残金に分かれ、修正のやり取りがあり、成果は人によって異なります。通販のひな形の欄には、これらを入れる場所がないため、「欄が合わない」と感じることになります。しかし、表記の枠そのものは変わりません。法11条が定める、価格、支払の時期・方法、提供時期、申込みの期間、撤回・解除の事項と、施行規則23条が定める追加の事項を、サービスの実態に合わせて書くだけです。
実務上の最大のポイントは、「何を表記に書き、何を契約書や規約に置くか」の線引きです。制作や相談では、契約書や規約に、著作権の扱い、修正の範囲、納品後の責任、秘密の保持など、細かい取り決めが必要になります。これらをすべて表記に書き込むと、長く読みにくくなるだけでなく、契約書との間に食い違いが生じます。表記には、法が求める事項の結論と条件の要約だけを置き、詳細は契約書や規約に任せる形が整理しやすくなります。
もう一つ、制作・相談型で最初に確かめたいのは、そもそも相手が個人か事業者かです。事業者が営業のために結ぶ取引は、通信販売の規定の適用除外になります(法26条1項1号)。このページの後半で、その判定と、別の類型が問題になる場面を扱います。必要かどうかの入口判定は必要かの判定のページにまとめています。
制作・相談型に特有の事項は、どの欄に置くか
制作・相談・代行に特有の事項と置き場所
| 事項 | 置く欄 | 表記に書くこと | 契約書・規約に置くこと |
|---|---|---|---|
| 着手金・内金 | 支払方法・時期 | 金額または割合、支払の時期、残金の支払時期 | 着手金の充当と精算の詳細 |
| 見積りで決まる価格 | 販売価格・役務の対価 | 標準の価格帯または算定の方法、見積りを申込みの前に示すこと | 見積書の有効期限、仕様変更時の扱い |
| 追加作業・オプション | 追加費用(施行規則23条4号) | 追加作業の内容と額、算定の方法 | 追加作業を発注する手続き |
| 納品 | 役務の提供時期 | 納品の期限(期間または期限)、納品の方法 | 納品物の範囲、検収の手続き |
| 修正 | 特別な提供条件(同8号) | 無償で修正できる回数と期間(あるとき) | 修正の範囲、修正に当たらない変更の扱い |
| キャンセル・中途解約 | 返品・解約(法11条5号) | 着手前と着手後の取扱い、精算の考え方の結論 | 精算の計算方法、既に作成した部分の扱い |
| 著作権・利用範囲、秘密の保持 | (原則として表記には置かない) | 要点のみ。書く場合は規約と一致させる | 権利の帰属、利用の範囲、秘密の保持、納品後の責任 |
| 成果の非保証 | 注意書き | 他の表示と矛盾しない形で補足 | 成果を保証しない旨の契約条項 |
作業や運用を引き受ける代行型のサービスでは、さらに、作業の範囲と、継続して行うかどうかが論点になります。たとえば、投稿の運用、事務作業、データの入力のように、毎月一定の作業を引き受けるものは、月額で契約することが多く、二回以上継続して契約する必要があるときの表示(施行規則23条7号)が関わります。月額、最低の契約期間、更新の方法、解約の期限、作業の範囲を、表記に書きます。作業のために必要な実費(広告費、外部サービスの利用料、交通費など)を別に請求するなら、追加費用(同4号)として、内容と額、または算定の方法を書きます。報告の頻度や方法は、提供条件として書いておくと、期待のずれを防げます。
この表で、判断が分かれやすいのは、修正の扱いです。「無償の修正は○回まで」は、申込みをする人にとって提供条件の一部で、特別な提供条件(施行規則23条8号)として表記に書く価値があります。一方、「どこまでが修正で、どこからが追加の作業か」は、契約の内容に関わる細かい取り決めなので、規約や契約書に置きます。表記と規約の双方に書く場合は、回数と期間を一致させます。
価格・着手金・残金・支払の欄の書き方
価格の欄は、法11条1号が、役務の対価の表示を求めています。見積りで価格が決まるサービスでも、「別途お見積り」とだけ書く書き方には限界があります。価格の欄は、申込みをする人が、費用の見通しをつけるための欄です。標準的な価格帯、または価格を算定する方法(時間単価、作業量の単位、成果物の種類ごとの目安など)を示し、そのうえで、個別の見積りは申込みの前に示し、見積りに同意した後に申込みとなる流れを書きます。見積りの提示が申込みの後になると、申込みの時点で価格が確定しておらず、法12条の6第1項が求める申込み画面の表示とも合わなくなります。
見本制作サービスの表記の見本(価格・支払・提供時期)
販売価格
○○の制作:○円(税込)から。内容に応じて、お見積りの金額が異なります。見積りは、お申込みの前にメールでお示しします。
法11条1号
追加費用
修正の回数を超える作業、仕様の変更に伴う作業、素材の購入は別途です。いずれも、作業の前に金額をお知らせし、ご承諾をいただいてから行います。
施行規則23条4号
支払方法・時期
着手金(代金の○%)を、ご契約後○日以内に。残金は、納品後○日以内に。お支払いは、銀行振込(手数料はお客様負担)またはクレジットカードです。
法11条2号
提供時期
素材と資料を受領した日から○営業日以内に、初回の納品をします。
法11条3号、施行規則24条2号
修正
初回の納品後○日以内であれば、○回まで無償で修正します。
施行規則23条8号
見本の金額・割合・日数は伏せ字です。実際には、サービスの運用と規約に合わせた数字にします。
着手金と残金に分ける場合は、それぞれの金額(または割合)と支払時期を書きます。ここで法13条が関わります。代金を提供に先立って受け取る通信販売で、申込みを受けて対価の一部を受領したときは、遅滞なく、承諾または不承諾などを書面で通知する必要があります(法13条1項)。ただし、代金を受領した後、遅滞なく役務を提供したときは、この限りではありません(同項ただし書)。制作や相談のように、着手金を受け取ってから提供まで日が空くサービスでは、この通知の運用を決めておく必要があります。支払の欄との関係は支払方法・時期のページで整理しています。
納品・修正・提供時期の欄の書き方
制作・相談型の提供時期は、納品日だけでなく、納品までに必要なやり取りが関係します。素材の受領、ヒアリング、初稿の提出、修正、最終の納品といった段階ごとに、起算点が変わります。これらを一つの文に押し込むと、期間が読み取れなくなります。段階を分けて、それぞれの期間を書くのが整理しやすい形です。提供時期の欄の基本は提供時期のページにあります。
書き方の例(一般的な例) 納品・修正の欄
納品
理由納期が変動することは書けるが、通常の期間が書かれていないと、期間・期限の表示にならない。
修正
理由回数・期間・範囲のいずれかを書かないと、無限の修正に応じると読める。
納品の方法
理由納品の方法と、データが取得できる期間を、申込みの前に知らせる。
着手後のキャンセルで返さない部分の書き方
制作や相談では、作業が始まった後のキャンセルが、最も争いになりやすい場面です。作業の途中までの対価を請求したいという事業者の立場と、頼んだ側の「納品を受けていないのに返金されない」という認識の間に、ずれが生じます。民法には、請負では、仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できる定め(641条)があり、委任や準委任では、各当事者がいつでも解除できる定め(651条1項)があります。ただし、どちらの規定が働くか、どの範囲の損害を賠償するかは、契約の内容と実態によって変わります。表記にそれを細かく書くことはできません。表記に書くのは、結論と条件の要約です。
着手後のキャンセルの欄の書き方の例と判定
「着手後のキャンセルは、いかなる場合も返金しません。」
△条件つき
事業者の都合で提供できなくなったときまで返金しないように読める。作業の進み具合に応じた精算の考え方が書かれていない。
「着手前は全額返金します。着手後は、進み具合に応じて精算します。」
○足りる
時期による取扱いの違いと、精算の考え方が読み取れる。精算の計算方法は規約に置く。
「着手金は返金しません。」
△条件つき
着手金が代金の一部なのか、解約時に精算される性質なのかが分からない。事業者の都合による不履行の場合の扱いも別に必要。
「納品後の返金はできません。」
△条件つき
納品物が契約の内容に適合しない場合の対応が別に必要。定めがあるなら、23条5号の事項として表示する。
「キャンセルの条件は契約書に従います。」
×足りない
条件の中身が表記にも申込み画面にもなく、見やすい箇所に明瞭に表示する基準(施行規則24条3号)を満たしていない。
「着手金は代金の○%。着手後のキャンセルでは、作業済みの部分の対価と、その時点までの実費を差し引いて返金します。」
○足りる
着手金の性質と、精算の対象が分かる。額の計算の根拠は規約で検討する(消費者契約法9条1号)。
精算の考え方を表記に書きやすくするには、作業を段階に区切っておく方法があります。たとえば、ヒアリング、初案、修正、最終の納品という段階ごとに、そこまでの対価の割合を決めておけば、「どの段階でやめたら、どの割合を精算するか」を、表記に一行で書けます。段階を決めずに「作業済みの部分」とだけ書くと、どこまでが済んだ部分なのかが、後で争いになります。段階の定義と割合は規約に置き、表記には、段階ごとに精算の割合が変わることと、その結論を書きます。割合を示すときは、表記と規約で同じ数字を使い、改定のたびに両方を直します。段階を設けないサービスでは、作業時間や作業量で精算する方法を、結論として書きます。
成果の非保証と、主観的満足の扱い
制作や相談は、結果が受け手の主観や努力によって左右されます。そのため、「成果を保証しません」といった注意書きが置かれます。置くこと自体に問題はありませんが、他の表示と矛盾していないかが重要です。法12条は、役務の内容その他の事項について、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示を禁止しており、施行規則26条1号は、役務の種類、内容、効果をその対象に挙げています。景品表示法5条1号も、役務の品質その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示を禁止しています。
書き方の例(一般的な例) 成果・満足に関する表示
成果
理由成果を約束するように読める表示は、法12条・景品表示法5条1号の問題になり得る。成果を約束しないなら、そう書く。
主観的満足
理由「何度でも」は、範囲が無限になる。回数・期間・範囲で書く。
実績の表示
理由根拠のない実績の表示は、優良誤認の問題になり得る。
事業者向けか個人向けか:適用除外と、別の類型が問題になる場面
制作や相談は、事業者が事業のために依頼することが多いサービスです。法26条1項1号は、申込みをした者が営業のために、または営業として締結する契約を、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規定の適用除外としています。つまり、事業者が仕事のために依頼する取引は、通信販売の表示義務の対象になりにくくなります。反対に、個人が私的な目的で申し込む取引は、対象になり得ます。
申込みをする人ごとの整理
| 申込みをする人 | 通信販売の規定の適用 | 考え方 |
|---|---|---|
| 事業者が、事業のために依頼する | 適用除外になり得る(法26条1項1号) | 申込みが営業のためであれば、通信販売の表示義務の対象になりにくい。ただし、表記を任意で出す場合は、事実と一致させる |
| 個人が、私的な目的で依頼する | 対象になり得る | 通信販売の広告として、法11条の表示が必要になり得る |
| 個人と事業者の両方に販売する | 混在 | 広告上、どちらを対象としているのかを分けて書く。消費者が含まれる前提で表記を整える方法がある。個別の判断は、取引の実態で変わる |
個人と事業者の両方が申し込む可能性があるサービスでは、広告や申込みの画面で、どちらを対象としているのかを分けて示す方法が考えられます。分けられない場合は、消費者が含まれる前提で表記を整えておくと、判断に迷う場面が少なくなります。詳細は、必要かの判定のページ(こちら)にあります。
もう一つ、制作や相談でも、別の類型が問題になる場面があります。継続して長期間にわたり指導を行うサービスは、特定継続的役務提供(法41条)に当たる可能性が残ります。これは、政令が指定した役務を、政令が定める期間を超えて提供し、5万円を超える金銭を受け取る契約に限られます(法41条、施行令24条・25条)。デザインの制作や一般的な相談がそのまま当たるわけではありませんが、学習の指導や技能の習得を目的とする継続的な指導を含む場合は、指定された役務に近づくことがあるため、政令の別表で確認が必要です。また、電話での勧誘で申込みを受ける場合は電話勧誘販売(法2条3項)、事業者の訪問先で契約する場合は訪問販売(法2条1項)が、それぞれ問題になり得ます。当たり得る場合の留保の書き方は、返品・解約のページにまとめています。
確認の問いと理由制作・相談型の表記を書く前の問い
依頼する人は、事業者ですか、個人ですか。両方ですか。
法26条1項1号の適用除外に関わり、表記が必要か、広告上どう示すかが決まるため。
価格は固定ですか、見積りで決まりますか。見積りは申込みの前に示されますか。
価格の欄を、価格帯・算定方法で書くか、見積りの流れで書くかが決まるため。
着手金を受け取りますか。受け取ってから提供まで、何日空きますか。
法13条の通知の運用が要るかを決めるため。
修正は何回、いつまで無償ですか。
特別な提供条件として書く事項が決まるため。
着手後のキャンセルで返す部分と、返さない部分を決めていますか。
返品・解約の欄に、結論と条件の要約を書くため。
電話の勧誘や、訪問先での契約はありますか。
電話勧誘販売や訪問販売の問題が出るため。
起きがちなこと
制作・相談・代行の表記でよく見られる不備
- 価格の欄が「別途お見積り」だけで、価格帯も算定の方法も書かれていない。
- 着手金の割合と支払時期が、表記と契約書で食い違っている。
- 提供時期が「制作の進行状況による」だけで、通常の期間が書かれていない。
- 修正の回数、期間、範囲が書かれておらず、無限の修正に応じるように読める。
- 「着手後は一切返金しません」と書き、事業者の都合で提供できないときの扱いがない。
- 「キャンセルは契約書に従う」とだけ書き、条件の中身が表記にない。
- 著作権の帰属や秘密の保持、免責などの契約条項が、表記に長く書き込まれている。
- 成果を強く示す表示と、「成果を保証しない」という注意書きが、同じページに並んでいる。
よくあるご質問
見積りで価格が決まるサービスは、価格の欄に何と書けばよいですか。
法11条1号は役務の対価の表示を求めています。標準的な価格帯、または算定の方法を書き、個別の見積りを申込みの前に示す流れを併記する形が考えられます。「別途お見積り」だけで足りるかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。見積りが申込みの後にしか出ない運用だと、申込み画面の表示(法12条の6第1項)との関係も問題になります。
着手金は、返金しないと書いてもよいですか。
書くこと自体は可能ですが、着手金が代金の一部で、解約時に精算される性質なのか、返さないものなのかが分からないと、条件が不明確です。事業者の都合による不履行の場合の扱いも別に必要です。表記には結論と条件の要約を書き、計算の根拠は規約で検討します(消費者契約法9条1号)。
事業者向けのサービスでも、特商法表記を載せる必要がありますか。
申込みをした者が営業のために、または営業として締結する契約は、通信販売の規定の適用除外になり得ます(法26条1項1号)。ただし、個人が私的な目的で申し込む場合は対象になり得ます。両方に売るなら、広告上の対象を分ける、または消費者が含まれる前提で表記を整える方法があります。
著作権の扱いは、表記に書くべきですか。
権利の帰属や利用の範囲は、契約の内容を定める事項で、規約や契約書に置くのが基本です。表記に要点を書くなら、規約と一致させます。表記が求めるのは、法11条と施行規則23条の事項で、契約条項を網羅することではありません。
長期間にわたるコンサルティングやコーチングは、特定継続的役務提供になりますか。
特定継続的役務提供は、政令が指定した役務を、政令が定める期間を超えて提供し、5万円を超える金銭を受け取る契約に限られます(法41条、施行令24条・25条)。指定されていない役務は当たりません。学習の指導や技能の習得を目的とするものは、指定された役務に近づくことがあるため、政令の別表で確認が必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、サービスの仕組みや申込みから提供までの流れによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド(消費者庁)