このページの要点
- 提供時期は法11条3号の表示事項で、施行規則24条2号により、期間または期限をもって表示する。
- 「順次」「準備でき次第」「目安」だけの書き方は、期間も期限も示しておらず、足りないと考えられる。
- 即時・予約日・納品日数・期間の型ごとに書き方が違い、起算点(申込み日、入金確認日、素材受領日など)まで書く。
- 申込みの期間は定めがあるときだけ表示する。成立時期の文言は、申込み画面や自動返信のメールと同じ運用に合わせる。
結論:提供時期の欄は、「いつまでに」が分かる期間または期限で書く
「特定商取引法に基づく表記」の引渡時期・提供時期の欄は、法11条3号が定める表示事項です。条文は、商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期のいずれかを広告に表示することを求めています。そして、表示の方法については、施行規則24条2号が「期間又は期限をもって表示すること」と定めています。ですから、「順次」「準備でき次第」「お申込み後にご連絡します」とだけ書いた欄は、条文が求める形になっていないと考えられます。基準は単純で、申込みをする人が、この欄を読んだだけで、いつまでに商品が届くのか、いつまでに役務が始まるのかを読み取れることです。
役務(サロンの施術、教室のレッスン、撮影、相談、制作など)では、「提供時期」に当たるものが一つではありません。予約をした日時に始まるもの、申込みから一定の日数以内に始まるもの、納品物があって納期が決まるもの、一定の期間にわたって続くものなど、型が分かれます。型が違えば、欄に書く文言も、数え始める日(起算点)も変わります。このページでは、まず条文の置き場所を確認し、書き方の当否を判定表で見て、型ごとの書き分けと、申込みの期間(法11条4号)、契約の成立時期の欄の文言までを順に整理します。
このページが扱うのは、欄にどう書くかという表示の問題です。契約がいつ成立するかの法的な整理や、提供が遅れたときの損害賠償は、別のガイドで扱います。表示事項の全体の構造は全体像のページで、価格の欄は価格・追加費用のページで整理しています。
引渡時期・提供時期に関する条文の骨子と、表示する場所
条文の骨子提供時期・申込みの期間に関係する条文
- 法11条3号商品の引渡時期、権利の移転時期、または役務の提供時期を、広告に表示する
- 法11条4号申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨と内容を表示する
- 施行規則24条2号引渡時期・移転時期・提供時期は、期間または期限をもって表示する
- 法12条の6第1項申込みを受ける画面(特定申込み)に、分量と、法11条1号から5号までの事項を表示する。3号・4号の事項も含まれる
- 法12条の6第2項申込みとなることや、前項の事項について、人を誤認させる表示をしてはならない
- 法13条1項、施行規則37条代金・対価を先に受け取る通信販売で申込みと代金の受領があったときの、承諾・不承諾等の書面による通知。承諾するときは提供時期も通知事項
法の条文は2026年10月21日時点のe-Gov法令検索で確認した内容です。
この表で押さえたいのは、提供時期の欄が「表記ページに書けば終わり」ではないことです。法12条の6第1項2号は、申込みを受ける画面に、法11条1号から5号までの事項を表示するよう求めています。3号の提供時期も、4号の申込みの期間も、この中に入ります。たとえば、ウェブの申込みフォームで「申込む」「購入する」といったボタンを押させる形をとっているなら、そのボタンのある画面(または、その直前の画面)にも、提供時期が分かる表示が必要になります。表記ページには「ご予約日時に提供」と書き、申込み画面には別の言い方を書く、という食い違いは、法12条の6第2項2号が禁じる「人を誤認させるような表示」に当たるおそれがあります。
もう一つ、請求があれば事項を記載した書面を交付するという方式(法11条ただし書)を使う場合でも、提供時期の欄が常に省けるわけではありません。施行規則25条2項は、購入者や役務の提供を受ける者の負担すべき金銭の全部を表示する場合に、一部の事項を表示しないことができるとしたうえで、ただし書で、代金・対価の全部または一部の支払が提供の前にあるときは支払時期を、申込みを受けた後に遅滞なく商品の送付や役務の提供をしないときは法11条3号の事項を、省略できない事項として挙げています。どの事項が省けて、どの事項が省けないかは、請求開示の条件とあわせて事業者名・住所・電話番号のページで扱っています。提供時期については、省略を前提にせず、表記にも申込み画面にも書いておくのが安全です。
「順次」「準備でき次第」「目安」はなぜ足りないのか:書き方の当否
「期間又は期限をもって」という言い方は、少し硬く聞こえますが、考え方は日常の約束と同じです。「来週の金曜日までに」は期限、「申込みから7日以内に」は期間による表示です。これに対して「順次」は、いつ始まるのかも、いつ終わるのかも示していません。「準備でき次第」は、始まる時点を事業者の都合に委ねていて、申込みをする人が待てる限度を示していません。どちらも、事業者の側では丁寧な言い方のつもりでも、表示事項としては、読み手が知りたいことが書かれていません。
反対に、期間や期限が書かれていれば、細かい言い回しまで厳格に問われるわけではありません。大切なのは、書いた期間や期限が、実際の運用で守れる数字であることです。法12条と施行規則26条4号は、法11条各号の事項、つまり提供時期の欄についても、著しく事実に相違する表示や、実際のものよりも著しく有利だと誤認させる表示を禁じています。最短の日数だけを書いて実際はそれより大幅に遅れる、という書き方は、期間が書かれていても問題になり得ます。次の判定表は、よくある書き方を条文に照らして並べたものです。
提供時期の欄の書き方の例と判定
「ご入金確認後、順次ご案内します」
×足りない
開始の時点も終わりの時点も読み取れず、期間・期限になっていない(施行規則24条2号)。
「準備ができ次第、開始します」
×足りない
始まる時点を事業者の都合に委ねる書き方で、期限を示していない。
「お申込み後、○日以内に開始日をご連絡します」
△条件つき
期限が示されているのは「連絡」であって、役務の提供そのものではない。連絡後の開始時期も、別に定めて書く必要がある。
「ご予約いただいた日時に提供します」
○足りる
予約で日時が確定する型では、予約日時が提供時期になる。予約の取り方と、予約が確定する時点が別の箇所で分かることが前提。
「ご入金確認後、○日以内に納品します」
○足りる
期間による表示になっている。日数が営業日か暦日か、どの時点から数えるかを明記すると、読み手の誤解を避けられる。
「繁忙期は遅れる場合があります」だけ
×足りない
例外を書いただけで、通常時の期間・期限が書かれていない。
「通常は○日程度。確定日は個別にご案内します」
△条件つき
「程度」が期限として足りるかは、判断が分かれ得る。個別案内の時期が申込みの前か後かも影響する。所管官庁の資料で確認が必要。
「お申込み完了日から○か月間ご利用いただけます」
○足りる
期間のある役務では、期間そのものが提供時期の表示になる。開始日(起算点)が明確なこと。
判定表の「条件つき」の行は、書き方の問題というより、前提がそろっているかどうかの問題です。たとえば「連絡」の期限だけを書く形は、連絡が来たあとの開始時期が別の欄や申込み画面で分かるなら、全体として足りる場合があります。反対に、「目安」「程度」だけを書き、実際には事業者が自由に日を決める運用であれば、期限を示したことにはなりにくいでしょう。どちらも、欄の1行だけでなく、申込みから提供までの流れ全体で読み手が時期を把握できるかで判断します。
提供の型ごとの書き分け:即時・予約日・納品日数・期間
役務の型を四つから五つに分けると、提供時期の欄に書く内容が整理できます。型の違いは、起算点の違いでもあります。申込みの日から数えるのか、入金を確認した日から数えるのか、素材や情報を受け取った日から数えるのかで、同じ「5日以内」でも、読み手が受け取る意味が変わります。複数の起算点が関係するときは、いちばん遅い起算点を基準にして、その旨を書いておきます。
提供の型ごとの書き分け
| 型 | 欄に書く内容の例 | 起算点として書くもの | 併せて書くとよいこと |
|---|---|---|---|
| 即時型(申込み後すぐに利用できるもの) | 「お支払いの手続き完了後、すぐにご利用いただけます」 | 決済の完了 | 振込やコンビニ払いなど、入金確認に時間がかかる手段のときは、その手段のときの時期を分けて書く |
| 予約日型(来店・出張・撮影など日時が決まるもの) | 「ご予約いただいた日時に提供します」 | 予約の確定(予約確定の通知) | 申込みから予約確定までの期限、予約できる最短の日、変更の扱い |
| 納品日数型(制作物・資料・データを納めるもの) | 「ご入金(または素材受領)の確認後、○営業日以内に納品します」 | 入金の確認日、素材や情報の受領日のうち遅いほう | 営業日か暦日か、修正を含めたときの納品日の数え方、納品の方法 |
| 期間型(講座・会員制・継続的なサービス) | 「お申込み完了日から○か月間ご利用いただけます」 | 申込みの完了日、または固定の開始日 | 開始日が固定の講座は開始日、更新の有無、期間の途中での扱い(継続契約は別の欄) |
| 回数・有効期限型(回数券・チケット) | 「ご購入日から○か月間有効です」 | 購入日、または初回の利用日 | 期限が過ぎたときの扱い、予約が取れない期間の扱い |
どの型でも共通するのは、「いつから数えて、いつまでか」が一続きの文として読めることです。表では欄に書く内容の例を一行にまとめましたが、実際の欄では、一つの型だけを書けばよいとは限りません。たとえば、予約制の施術に、事前に送るアンケートの回答が必要な場合、予約日型に「アンケートを予約の前日までに提出する」条件が加わります。また、制作サービスで見積りの合意が先に必要なら、納品日数型の起算点は、見積りの合意日や素材の受領日になります。そのサービスの流れを、申込みから提供まで一度書き出して、起算点になり得る日付をすべて拾ってから、欄の文言を決めると整理がつきます。
継続して提供するサービスでは、提供時期の欄に「期間」を書くだけでは足りない場面があります。二回以上継続して契約する必要があるときは、施行規則23条7号が、その旨と金額、契約期間その他の条件を表示するよう求めているためです。この点は、その他の表示事項のページで扱っています。
目安と非保証の併記、遅延したときの書き方
実際の提供時期は、予約の混み具合や素材の到着、機器や天候など、事業者の力が及ばない事情で変わります。そのため、期限を書くことをためらう事業者は少なくありません。その場合の書き方としては、「期限そのもの」と「遅れる場合の扱い」を分けて書く形が整理しやすくなります。期限は、通常の運用で守れる数字を書きます。そのうえで、守れない事情が生じたときに、いつ、どのように知らせるか、新しい時期をどう決めるか、提供できなかったときの代金の扱いはどうするかを、別の文で書きます。
書き方の例(一般的な例) 提供時期と遅延の扱い
納品の欄
理由「すみやかに」は期間でも期限でもない。起算点と日数の数え方を書くと、読み手が時期を把握できる。
予約の欄
理由「調整」では、提供時期が決まる時点も、決まる方法も分からない。確定の方法と期限を書く。
遅延の欄
理由「遅れる場合がある」だけでは、遅れたときの連絡と新しい時期の決め方が分からない。取消しや返金の欄とつなげる。
「目安」を併記する場合は、期間または期限の表示と、目安の表示を、別の文にしておくのが読みやすい形です。「納品は入金確認後○営業日以内です。通常は○営業日程度で完了します。」のように、期限を先に置き、目安を後ろに添えます。逆に、目安だけが書いてあって期限がない形は、判定表のとおり、足りないおそれがあります。
「特定の期日を保証しない」といった文言を入れる事業者もいます。こうした文言が、表示した期間・期限を事実上打ち消す効果を持つと、せっかくの期間の表示が意味を失います。保証しない対象を、期限の表示そのものではなく、「事業者の責任によらない遅れ」に限定して書くと、期限の表示は生きたまま、例外も読み手に伝わります。どこまで書くかは、実際の運用に合わせて決めます。
申込みの期間(法11条4号)と、契約の成立時期の欄の文言
法11条4号は、申込みの期間に関する定めがあるときに、その旨と内容を表示するよう求めています。募集の期間がある講座、期間限定の価格やキャンペーン、先着順の受付、定員に達したら締め切る、といったものが当たり得ます。反対に、期間を定めず、いつでも申込みを受け付けているサービスでは、この欄に書く内容がありません。「定めがあるときだけ」の事項なので、欄を設けるかどうかは、そのサービスの実態で決まります。
書き方は、始まりと終わりの日付(○月○日から○月○日まで)、定員に達したときの扱い(期間内でも締め切るか)、期限後に申込みを受けるかどうか、の三点が基本です。期限を付けた特別価格を表示している場合は、法12条が禁じる有利誤認の表示との関係もあります。表示した期限が過ぎても同じ価格のまま売り続けるなど、実際と食い違う運用は避けます。
契約の成立時期は、法11条の表示事項ではありません。ただ、表記ページの末尾や、申込みの流れの説明に、成立の時点を書く事業者は多くあります。書くなら、次のように、実際の運用と同じ流れで書くのが基本です。たとえば、申込み後に届く自動返信のメールを、事業者が承諾したことの通知としないのであれば、そのメールが「申込みを受け付けたことのお知らせ」であって承諾ではない、と書きます。承諾のメールや予約確定の通知をもって成立とするなら、その旨を書きます。逆に、自動返信に「ご契約が成立しました」と書いておきながら、表記では「承諾後に成立」と書くと、読み手に二つの説明が並ぶことになります。
申込みから提供までの流れの書き方
前払いの場合に事業者が出す書面による通知(法13条)の詳細は、支払の欄を扱う支払方法・時期のページで触れています。
申込みの有効期限を設ける場合もあります。たとえば、振込払いの申込みで、期限までに入金がなければ申込みを無効とする、という書き方です。この期限は、法11条2号の支払時期の欄に属する事項ですが、申込みの期間(法11条4号)とは別のものです。二つの期限を同じ文に押し込むと、募集期間なのか、入金の期限なのかが分からなくなるので、欄を分けて書きます。
提供時期の欄を書く前の、確認の問い
提供時期の欄は、文言を磨く前に、サービスの運用の事実を確かめておく必要があります。次の問いは、書き始める前に答えを出しておきたいものを並べたものです。
確認の問いと理由提供時期を決めるための問い
提供が始まる日(納品日)を、申込み日、入金日、素材受領日のどれから数えますか。
複数の起算点があるときは、読み手が最も遅い日を基準にすると分かるように書く必要があるため。
予約が混み合う時期に、最も遅い場合で、申込みからいつまでに提供できますか。
期限は、通常の運用だけでなく、混み合う時期にも守れる数字にしておく必要があるため。守れない期限の表示は、法12条の問題になり得る。
提供時期を、広告、申込み画面、表記ページ、予約確定のメールで、同じ文言にしていますか。
申込み画面の表示(法12条の6)と表記の食い違いは、誤認させる表示の問題になるため。
前払いのとき、入金から提供までに日が空きますか。
代金を先に受け取り、提供までに間が空くなら、承諾等の通知(法13条)の運用が要るかを確かめる必要があるため。
期間のある役務は、開始日が固定ですか、申込みの日からですか。
期間による表示の起算点を、欄にそのまま書く必要があるため。
提供できなかったときの扱いを、返品・キャンセルの欄に書いていますか。
提供時期の欄と、取消しや返金の欄がつながっていないと、読み手が行き場を失うため。返品・キャンセルの欄の書き方で整理しています。
起きがちなこと
提供時期の欄でよく見られる不備
- 「順次」「準備でき次第」「お待ちください」だけが書かれていて、期間も期限も読み取れない。
- 納品までの日数が書かれていても、営業日か暦日か、どの日から数えるかが書かれていない。
- 表記ページには「ご予約の日時に提供」とあるのに、申込み画面と予約確定のメールの説明が別の言い方になっている。
- 繁忙期や天候による遅れの例外だけが書かれていて、通常時の期間・期限がない。
- 最短の日数だけを書き、実際の運用ではそれより大幅に遅れることが多い(法12条の問題になり得る)。
- 期限付きの特別価格を表示したまま、期限が過ぎても同じ価格で販売している。
- 自動返信のメールに「ご契約が成立しました」と書きながら、表記では承諾後に成立すると書いている。
- 前払いで申込みを受け、提供まで日が空くのに、承諾等の通知の運用が決まっていない。
よくあるご質問
提供時期は「3日〜7日」のように幅を持たせてもよいですか。
期間による表示であれば、幅があっても形式上は期間にあたり得ます(施行規則24条2号)。ただし、幅の上限が運用で守れる数字であること、起算点が書かれていることが前提です。上限を守れないのに下限だけを目立たせる書き方は、法12条の有利誤認の表示として問題になり得ます。
予約制で、日時は予約のときに決まるだけの場合、何と書けばよいですか。
「ご予約いただいた日時に提供します」のように、予約日時が提供時期になる旨を書きます。そのうえで、予約が確定する時点(予約確定のメールなど)と、申込みから確定までの期限が別の箇所で分かるようにします。申込み画面にも、同じ趣旨の表示が必要です(法12条の6第1項)。
納期が案件ごとに違う制作サービスは、どう書けばよいですか。
標準的な納品日数を期間で書き、案件ごとに納期が変わる場合は、申込みの前に書面やメールで納期を示す旨と、その示す時期を書く形が考えられます。「別途ご案内」「個別に決定」だけでは、期間にも期限にもなりにくい点に注意が必要です。個別の納期が申込みの前に確定する仕組みなら、その仕組み全体を書きます。
申込みの期間を書かないと、違反になりますか。
法11条4号は、申込みの期間に関する「定め」があるときに、その旨と内容の表示を求めています。募集期間や先着順の締切りなどの定めがなければ、書く内容はありません。定めがあるのに表示していない場合や、表示した期限と実際の運用が違う場合は、表示の不備として問題になり得ます。
提供が遅れたとき、表記に「遅れる場合があります」と書いてあれば、責任はなくなりますか。
表記の書き方だけで、遅延の責任が当然に消えるわけではありません。遅延の責任は、契約の内容や法律の規定によって決まります。表記では、期限を表示したうえで、遅れるときの連絡と新しい時期の決め方、提供できないときの返金の扱いを、実際の運用に合わせて書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、サービスの仕組みや申込みから提供までの流れによって異なることがあります。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月21日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 特定商取引法ガイド(消費者庁)